※本記事は臨床経験をもとにしていますが、個人が特定されないよう内容は再構成しています。

正直に言うと、
最初に思ったのはこれでした。
「……この人たち、どこが病気なんだろう?」
ご主人も奥さんも、
本当に感じがいい。
言葉遣いも丁寧で、距離感も適切。
こちらが構えなくても、自然に会話ができる。
精神科で働いていると、
**“それっぽい人”**に身構える癖がつくけど、
このご夫婦にはそれが一切なかった。
会話は穏やか。でも、途中で空気が変わる 🌫️
雑談をしているときは普通。
世間話、体調の話、昔の仕事の話。
ところが、
ふと話題が近所の話に触れた瞬間、
空気が少しだけ変わった。
「実は、隣から電磁波攻撃を受けてましてね」
声のトーンは変わらない。
怒りも興奮もない。
ただ、事実を説明するように語る。
その自然さが、逆に引っかかった。
否定しなくても、揺らがない ⚡
こちらが
「それは大変ですね」
と返しても、
「そうなんです」
と淡々と続く。
話をずらしても、
時間を置いても、
結論は同じところに戻ってくる。
👉 修正されない話。
この時点で、
「あ、ここか」
と、看護師としてのセンサーが反応した。
もう一人も、同じ世界を見ていた 👀
奥さんとも話した。
驚くほど、同じだった。
言葉は違う。
でも、意味は同じ。
「隣から、ずっと電磁波攻撃されている」
夫婦で相談して、
二人で答えを出して、
二人で確信している。
この時、
“個人の妄想”じゃない
と感じた。
境界線を越えたのは、突然だった 🚨
しばらくして、
ご主人が近隣に対して物理的な行動を起こした。
悪意というより、
「耐えきれなかった」
そんな印象だった。
結果、入院。
精神科では珍しくない結末だ。
病棟に来なかった「もう一人」🌀
入院後、
奥さんはよく面会に来た。
そのたびに話をした。
正直に言うと、
妄想は奥さんのほうが強かった。
内容はより具体的で、
確信も深い。
でも、
奥さんは誰も殴っていない。
何も壊していない。
ので、入院はされていない。
あの時感じた違和感の正体 🧩
あとから振り返ると、
最初の違和感はこれだった。
「この人たち、安心しきっている」
怖がっているはずなのに、
不思議と落ち着いている。
それは、
二人で同じ答えを持っていたから。
看護師として残った感覚 📝
病気は、荒れている人だけのものじゃない
違和感は、派手な症状より静か
入院は「重さ」ではなく「越えたかどうか」
最後に
精神科で一番怖いのは「普通に見える妄想」
共有された確信は、静かに強くなる
あの違和感は、たぶん正しかったと思います。


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